Kz Guitar Works

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Kzイベントレポート&伊集院インタビュー【2020年の総括, 2021年の展望】

更新日:2020-12-30

2020年の11月23日に逗子 Surfersにて2020年を締めくくるイベントとして「祭 The Party 2020」を開催しました。イベント内では多くの新作ギターと歴史を彩るギターを展示し、また西尾知矢さん、KaZさん、Team Kz Guitarバンドによるライブを催しました。

2020年の総括と20201年の展望をギター、ライブ、そして代表の伊集院へのインタビューよりお伝えします。

Kzを体現するギター

イベント会場では2020年までの、そして2021年からのKzを示すギターの展示を行いました。

Pre Kz One Prototype

「レッド・スペシャルの良いところを取り入れた全く新しいエレキギター」というコンセプトのもと、2015年に製作したプロトタイプです。ボディデザインにはレッド・スペシャルの影響が色濃く現れています。この時に採用したピックアップはレッド・スペシャルと同じTri-Sonicタイプ。ピックアップの結線方法もシリーズ(直列)のみでした。

Kz One Semi-Hollow #1

製品化に向けてデザインを一新し、2016年にNAMM Showに出展したKz One初号器です。当初はシリーズ/パラレル切り替えスイッチが未搭載で、現在のKz Oneよりもシンプルなコントロールでした。(画像のギターは2020年にシリパラスイッチが追加されました)

Kz One Semi-Hollow 3S23 Kahler

Kz Oneの標準的なスペックを全て備えたフラッグシップモデルです。このモデルのために開発したKGWピックアップ、ケーラートレモロ、セミホロウボディ、シリパラスイッチとフェイズスイッチ搭載で23通りのサウンドバリエーションが選択可能なコントロールを備えます。

Kz One Semi-Hollow Round Top 24F 3S23 Kahler(2021新モデル)

2021年より展開のラウンドトップボディ&24フレット仕様のKz Oneフラッグシップモデルです。仕様はKGWピックアップ&セミホロウボディ&ケーラートレモロ。

Kz One Solid 24F Round Top 2H6 T.O.M.(2021新モデル)

2021年より展開のラウンドトップボディ&24フレット仕様のKz Oneです。Kz Classicハムバッカー&ソリッドボディ&T.O.Mブリッジを搭載。

Kz ST

ストラトのボディーデザインをモチーフにしながら、随所にKzらしさを強く持つモデル。ボディバックとネックにはKz工房製のモデルで標準的に使用するホンジュラスマホガニーを使い、セットネックによるネックジョイントを採用。

Kz One Bolt-On 22

アルダー材を使用したソリッドボディ、シンクロスタイルのトレモロユニット、段つきのヘッド、メイプルネックといったトラディショナルな要素を多く取り入れたボルトオンモデルです。スケールはKz One同様にレギュラーとミディアムの中間である25インチを採用し、ピックアップはボルトオンモデル専用に新たに開発しました。

KGW Bolt-On(コンセプトモデル)

2021年新規展開予定の新モデルです。Kz One Bolt-0n 22をもとに、トラディショナルなピックアップを採用しています。「KGW」ブランドとして広く展開する予定です。

Kz One Adam Slack

英国発グラムロックバンドThe StrutsのギタリストAdam SlackシグネイチャーKz Oneモデルに、同バンドボーカリストのLuke Spillerがハンドペイントした特別な1本です。

Jed-0 Bass

英国発グラムロックバンドThe StrutsのベーシストJed ElliottのコラボレーションモデルのJed-Oベース。

Jed Guitar(コンセプトモデル)

Jed-Oベースのデザインをギターとしてリデザインしたコンセプトモデルです。弦を裏通しするノントレモロブリッジとEMG SAピックアップをKzとして初めて採用しました。

Kz RS Replica

QueenのギタリストBrian Mayの伝説的ギター「レッド・スペシャル」のレプリカモデルです。通常のギター製作のセオリーではありえない斬新な設計、デザイン、弾き心地、サウンド、その全てを再現した完全レプリカモデルです。

Kz RS Hybrid

レッド・スペシャルとKz Oneのハイブリッドモデルです。レッド・スペシャルの「サウンドとルックス」をKz One の「弾きやすさ」で実現しました。Kz 製レッド・スペシャルの進化形です。

Kz RS Hybrid Jr.

RS Hybrid(ハイブリッド)のジュニアモデルです。Kahlerトレモロを採用し、ピックアップ、スイッチ、ボリューム、トーンをピックガードにマウントしたことで操作性とメンテナンス性が向上しました。

Kz One Bass

32インチスケールを採用してオリジナルモデル。Kz独自の解釈でユニークかつ実践的なベースに仕上げました。

Kz TE Style(コンセプトモデル)

2021年にKzが20周年を迎えるにあたって「トラディショナルを見つめ直す」というコンセプトのもとに製作したコンセプトモデルです。トラディショナルなテレキャスのスタイルをモチーフにしています。

Kz ST Style 60’s(コンセプトモデル)

2021年にKzが20周年を迎えるにあたって「トラディショナルを見つめ直す」というコンセプトのもとに製作したコンセプトモデルです。トラディショナルな60年代のストラトのスタイルをモチーフにしています。塗装はラッカーで仕上げました。

Kz LP Style(コンセプトモデル)

2021年にKzが20周年を迎えるにあたって「トラディショナルを見つめ直す」というコンセプトのもとに製作したコンセプトモデルです。トラディショナルなLPのスタイルをモチーフにしています。塗装はラッカーで仕上げました。

ライブステージ

ライブステージはKz製ギターのサウンドを存分に堪能できるショウになりました。

今回のイベントの内容について、ギタリストの清水さん、MCのスベリー・マーキュリーさん、そしてKz 伊集院がお話ししてショウはスタート。

KaZさんライブステージ

KaZさんはKz Oneを高性能なギタープロセッサーを組み合わせ、エフェクティブなサウンドを活用したインスト曲を演奏。

Kz Oneのサウンドのレンジの広さ、汎用性の高さをまざまざと見せつけるステージになりました。

西尾知矢さんライブステージ

西尾さんは自身のシグネイチャーモデル「木太郎」を手にロック系のインスト曲をプレイ。深く歪んでも潰れず、キレのいいサウンドはKzギターならでは。


▲Kz One “木太郎”

ジャムセッション

ご来場いただいた方を巻き込んでのジャムセッションの時間を設けました。使用したのはもちろんKz製ギター。


▲Kz One Semi-Hollow 3S23 Kahler


▲Kz One Junior 3S11 Syncro

西尾さんと2名の飛び入りジャムセッションの後には清水さんと教え子によるジャムセッション。


▲貴重なPre Kz Oneモデル

Team Kz Guitarバンドライブステージ


▲ツインギターに清水一雄さん、法田勇虫さん、ベースはのまぐちひろしさん、ドラムは藤田 勉さん、キーボード熊木 佳枝さん


▲法田さん(左)、清水さん(左)

インスト曲を中心としてステージで、2本のKzギターのサウンドを存分に堪能。


▲Kz One Semi-Hollow Round Top 24F 3S23 Kahler(2021新モデル)


▲逗子の海をイメージしてカラーリングしたカスタムKz One


▲楽曲によって持ち替えたKz One Junior 3S11 Syncro

のまぐちひろしさんが使用したベースはKz Jed-0 Bass。ボトムを力強く支えるサウンドはベーシストにとって馴染みのあるもので、アンサンブルの核になっていました。

終盤にはフレディ・エトウさんが登場。QUEENの楽曲を披露していただきました。

Kz 伊集院インタビュー

伊集院:元々2020年はWinter NAMM 2020(アメリカはLAで行われる世界最大のギターショウの1つ)に出展して、そこで感じたことを元にして1年間動くスケジュールをしていましたが、まずはそこが頓挫してしまいましたね。

楽器フェアやサウンドメッセも中止に近い形になってしまいましたが、ここでは世界的な展開を目指して企画して今までよりも安価なモデルを発表する予定でした。そうして突き詰めたモデルを2021年に展開しようと考えていたのですが、それも難しい状況ですね。

そもそも2020年の1月と現在では状況が全く違うので、正直なところ全て白紙に近い状態になってしまいました。「そもそもエレキギターに今までと同じように需要があるのか」という部分も考える必要がありますよね。

エレキギターって自宅だけで完結するような使い方もあるわけですけど、僕個人的にはバンドで大きな音を出して、っていうのがやっぱり好きなんです。でも今の状況って真逆なので、なかなか苦しいところはどうしてもありますよね。

伊集院:とにかく時間があったので、様々なチャレンジをしました。例えば今回展示したストラト、テレ、レスポールと言ったトラディショナルなスタイルを元にしたギターは原点を振り返る意味で、製作したものです。こうした伝統的のあるスタイルのギターを作ることで、あらためて勉強になることが多かったですね。

実はそれらのギターを作るのは本当に大変でした(笑)なんせ今まではKz Oneを作ることに対してだけ集中していたので、すごく時間がかかってしまったんですよ。時間があった今年だからこそできたことですね。

その中から苦心して生み出したのがボルトオンモデルです。

伊集院:ボルトオンモデルに関しては2000ドルを切る価格帯のギターとして、世界的な展開を目指して開発しました。NAMM Showに何度か出展していて感じたのが、2000ドルには大きな壁があることです。そこを境にしてバイヤーの質が大きく違うようで、その点で今までとは異なるやり方にチャレンジしたのがボルトオンモデルですね。

この方向性で、KGWという新たなブランドでの展開を企画しています。KGWは「より多くの方に手に取ってもらう」ことを目指していて、KGWブランドは2021年の春頃にはリリースしたいと考えています。

伊集院:そうですね、若い人により手に取ってもらいたくてKGWを今まさに開発しています。具体的には、スペックの面でトラディショナルな方向性を強め、価格は今までよりも抑えたものです。

2本目、3本目に買うギターはその後のギター人生に大きな影響を及ぼすと思います。そんな時に若いギタリストを助けられるようなギターを作りたいと思ったんです。Kz Oneは非常にユニークですからね。

伊集院:まずはKGW。これを30本ほど春頃までに作ることが決まっています。まずはここに対して尽力したいなと思っています。

KGWとは別に、なんとなく頭で思い描いているだけですが家で一人で弾いて楽しいギターを作りたいですね。ピックアップはなくてもいい、エレキ弦を貼ってエレキみたいに弾けるけどアコギのように生音だけで楽しめるような。

これは単純に僕が家で弾くならこういうギターが欲しいなというもので、これから考えるところです。

伊集院:実はコロナの影響で辞めてしまうスタッフがいるんです。それは大変ですが、体制を変えて整えるのにはいいタイミングかもしれませんね。

今まではどうやって高いクオリティで効率よく本数を作るかということに注力していた部分もあったのですが、2021年は1本1本により力を込めることを考えたいです。コストと時間をかけて、ということですね。これは工房をスタートした最初の頃のやり方に立ち帰るということになるかもしれません。

他ブランドの製造など(OEM)の仕事を受けようかなと考えたこともあったんです。でも、それに追われてしまうと自分たちが本当にやりたいことをやるための自由度が失われてしまうので。。。まだ悩んでいるところは多いのですが、今は自分たちがやりたいことや根本にある思いに対してフォーカスしていくという方向を向いています。とにかく一生懸命やるだけですね。

伊集院:具体的なものもなくはないんですけど、やっぱりコロナの影響を考えてしまいますね。大局が180度変わってしまった今年でしたが、今までの延長線上ではない新しい何かを常に考えてやっていきたいなと思っています。

メーカーとしての転換点が今来ているのかなっていうのも感じています。ブライアン・メイ、QUEENの再ブレイクでKzも注目されて、今はそれが落ち着きました。ここからが本当の勝負だと感じています。

足元を見つめ直して再出発するという意味で、今年の時間的な余裕は必ずしも悪いことではなかったと思っています。

2020年はコロナの影響で大きく変わってしまった年でしたが、2021年は我々が自分から考えて変えていく年にしたいなと考えています。