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Guitar Gallery 0069 / Kz FB DDD26 Korina Trans Black Jacaranda Finger Board

更新日:2022-11-05

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ブラック・リンバウッド、ハカランダ、ゴールドパーツ、トートイズ・インレイとバインディングなどを贅沢な仕様を盛り込んだKz FB

Kz FB DDD26 Korina Trans Black Jacaranda Finger Board

 


◇60年代ファイアー・バードがモチーフの島村楽器ミーナ町田店様オーダー品
◇9プライのボディ&ネックとウイング部のV字接着
◇ブラック・リンバウッドがメインのボディ/ネック材
◇ハカランダ指板
◇ゴールドとTortoise(べっ甲柄)の装飾
◇KGW Mini-Humbuckerを3つ搭載。26種のサウンド・バリエーション。

 

 


《From Workshop》
弊社ではカスタムオーダーのギターも得意です。オーダーは個人のお客様からだけでなく、楽器店からも受け付けています。2021年は弊社創立20周年のアニバーサリーイヤーでしたので、通常では受付できないようなモデルにもトライしようとした1年でもありました。今回ご紹介するのは島村楽器ミーナ町田店様からのオーダー品“Kz FB DDD26 Korina Trans Black Jacaranda Finger Board”です。イベント向けに作られたスペシャル・モデルで、弊社アニバーリーイヤーでなければ対応できない高度な仕様ばかりで構成されています。

 

 

■Kz版ファイアーバード誕生の経緯

島村楽器ミーナ町田店の林田店長は、60年代のリバース・ファイアーバードに思い入れが深く、イベント出展用に、リバース・ファイアーバードをモチーフとしたギターを製作できるメーカーを探していました。というのも、特にボディ/ネックの9プライの構造やウイング部のV字接着が製作時のハードルとなる特殊な構造のギターだからです。

 

弊社はミーナ町田店様から日ごろより懇意にしていただいています。弊社の通常ラインナップには、それらの特殊要素を持ったギターはありませんが、製作は弊社の技術では可能です。ただし、設計からのスタート、特別な木材も仕入れなくてはならないので、1年以上の時間と相応の費用がかかることをご承知していただきました。こうして、林田店長の熱い思いをKz Guitar Worksで形にしたのが、“Kz FB DDD26 Korina Trans Black Jacaranda Finger Board”です。

 

60年代のリバース・ファイアーバードは、当時、人気の工業デザイナーがデザインしました。美しい曲線で象られたボディとリバース形状のヘッドなどのアウトライン。ボディのウイング部のテーパー加工やヘッドの立体感などは画期的な形状です。また、構造も木材を9ピースで貼り合わせたスルーネック方式、V字型でウイングを接着するなども同様です。これらは長所短所があり、今回は、(現在では事実上、入手不可能な)大きな木材を必要とするスルーネック構造は採用しませんでしたが、他の要素を盛り込みつつ、豪華な仕様と現代的なKzのオリジナル仕様をミックス。こうして“KzFB”が完成しました。

以下、細部まで撮影した写真でご紹介します。

 

■ブラック・リンバウッドを9プライで使用。曲線と平面が美しいボディ

ボディのアウトラインは美しい曲線で構成されています。これは新規にテンプレートを用意して製作しました。

 

 

ボディはブラック・リンバウッド材とウォルナット材を組み合わせた9プライ・ボディです。

 

60年代のリバースFBは、ネックからボディをスルーする部分の木材はマホガニーとウォルナットを使った9プライ構造です。しかし、製作時に必要な各木材の厚さの具体的な数値は公表されていません。そのため、時間をかけてKzギターが独自にリサーチし、反映しました。

 

今回使用したコリーナは、厳密にはブラック・リンバウッドと呼ばれる木材で、ブラック・リンバウッドは杢目がホワイト・リンバウッドよりも、やや強め、重さはマホガニーよりも軽めです。その杢目を生かすためにシースルー・ブラックのカラー、導管がわかるオープン・ボアで塗装しています。このカラーは過去に町田店に製作したRSと同じもので、黒目止めのうっすらトランスブラックがかったカラーはミーナ町田店様のオーダーのRSと同じものです。

 

 

ボディは9プライの中央部にウイング部を接着しています。ウイング部は中央が厚く、外周が薄いテーパー加工をしています。この立体感はリバースFBファンを魅了するポイントの一つです。このギターではボディにもTortoise(べっ甲柄)のバインディングを施しています。

 

 

中央部とウイング部をV字に接着する方法も継承しました。これは他のギターでは使われていない方式です。そのため、このギターのためにV字切削可能な刃物を海外から仕入れて使用しました。「Fire Birdと名乗るからにはボディのウィング接着はV字でなければいけない」というミーナ町田店のご担当者である石田様のご要望に応えたこだわりポイントです。

 

▲V字切削するためのルーター用ビット(刃先)

■ボディ加工中の作業から

 

今回はセットネックで製作していますが、ジョイント部は目を凝らして見ないとわからないほど高い木工精度で製作しました。

 

 

■ハカランダ材を使った指板とべっ甲柄のブロックインレイ

ネックのスケールは635mm。指板とヘッドトップにハカランダ材を使用した贅沢な仕様です。指板のポジション・マークにはTortoise(べっ甲柄)のブロック・インレイを施しましたが、これは発色が良くなる加工をしています。ネックにもボディと同様のバインディングをネックにも巻いています。

 

 

ヘッドは全体のイメージこそ踏襲しましたが、小型化し、同時にKzギターTradシリーズの要素も入れた新デザインです。また、ボリュートを大きめで尖った形状にしています。チューナーにはGotoh製SD-91-P5R MG-T L6をリバース配置で搭載しています。これらによりリバースFBの強度的な弱点を克服し、現代的な演奏にも対応するテンション感も得ています。また、チューナーもL6という型番のべっ甲柄のペグボタンをチョイス。立体的デザインとして、ヘッドトップにハカランダ材とTortoise(べっ甲柄)トラスロッド・カバーを使用、ロゴ・メダルもゴールドです。

 

 

■3つのKGW Mini-Humbuckerが生み出す26の音色

ピックアップはKGW Mini-Humbuckerを3つ搭載しています。このピックアップはミニ・ハムバッカー・サイズなので、1本のギターに無理なく3つ搭載でき、その際にも個々のP.U.同士が磁力干渉しにくい設計です。サウンドはハムバッキング時にはフル・サイズのP.U.に比べて、ややブライト。タップしてシングル・コイルP.U.としても使用できます。ダブル/シングル時の個々のサウンドの良さはもちろん、ミックス時の音量バランスが良く、切り替え時のサウンド・キャラクターも1本のギターの音として整合性がある、などを設計段階から盛り込んだ現代の高性能ピックアップです。

 

 

このギターでは3つのピックアップそれぞれに「OFF」「SINGLE」「HUM」を切り替えるトグルスイッチを採用しました。これにより26種類のサウンドを生み出します。また、どのポジションで演奏しているかがわかりやすいのもメリットです。ピックガードもTortoise(べっ甲柄)を使用しています。コントロールはマスター・ボリュームとマスター・トーンです。

 

 

 

■Goldパーツをチョイスした豪華なルックス

ブリッジはKzらしいKahlerトレモロを搭載しました。ゴールドのKahlerトレモロはシースルー・ブラックのボディの上で特に映える組み合わせです。また、ピックガードと同様にバックパネルもTortoise(べっ甲柄)を使用しています。

 

 

 

 

今回は、リバースFBをモチーフにしたKzFBでしたが、Kz Guitar WorksではフライングVやエクスプローラをモチーフにしたギターも研究・開発中です。

 


《Voice 1 : 島村楽器ミーナ町田店 林田憲和 店長》

私がファイアーバードを好きな理由は(ボディ周辺の)曲線美です。今から60年も前に、未来的なフォルムを持ったギターをデザインしたのはすごいと思います。

 

今回の企画では、当店の石田からの「歴史上、発売されていないような“ファイアーバード”にしてみたい」という意見を採り入れました。完成するとボディ周辺の形なども私が想像した以上にかっこいいギターとなりました。

 

《Voice 2 : 島村楽器ミーナ町田店 石田純一さん (エレキギター担当)》

Kz Guitar Worksさんにも完全に新規のモデルなので負担が大きかったと思います。そこは「Kzさん20周年モデルなので」と推してやってもらいました。実は「ブラック・リンバウッドで大きな木材もありますよ」と聞いていたので、このギターと同時期に“RS Hybridのコリーナ・モデル”をオーダーしていました。このKz FBはその姉妹モデルです。「じゃあ、木材はそれで、木材や塗装、装飾というのはこういう感じで」と進みました。加えて、「ファイアーバードのウイングは外せない」要素と申し入れたところ、ウイングのジョイントの試作までしてくれました。また、プライウッドのネックも外せない要素としてオーダーに入れました。

 

完成したKz FBはイメージ通りの形です。プライウッドはもちろん、課題のウイングもテーパーも、木工の技術は全て良いですね。六十年前のモデルより、当然、はるかに高い技術で作られていて、使いやすさも増しています。

 

サウンドはブラック・リンバウッド(コリーナ)とハカランダを使っているので、木部だけでもブライトな特性があります。それにKGW Mini-Humbuckerを組み合わせているので、良くマッチしていると思います。

 

DDDのコントロールですが、以前、DSDのKz Oneをオーダーしたことがあります。そちらはフェイズSW装備で、音のバリエーションが魅力となる分、シンプルにはなりません。こちらはダブルコイルとシングルコイル(とOFF)の切り替えだけなので、欲しいところをシンプルに選べます。操作もスイッチを(ボディの外に)倒すだけですから。音のバリエーションだけでなく、見たままのわかりやすい操作が魅力です。

 

塗装についても「目止めのみで、軽くブラックをシースルーで入れてほしい」というオーダーをバッチリ仕上げてくれました。見た目は私のギターを参考にしたのですが、見た目だけでなく、触り心地も最高です。

 

このギターはすでに売約済ですが、他に、Kz RS Hybrid Junior Korina Trans Blackもあります。こちらはホワイト・リンバウッドを使い、ゴールドパーツやバインディングなど今回のKzFBと姉妹機関係となるギターです。

 

今回のオーダーでKzさんと当店にFBモデルのノウハウが貯まったことになります。ですので、ご自身のオーダーを盛り込んだオーダーモデルも受けやすくなりました。今回のギターで気になった方は、お見積りもできますので、お問い合わせ下さい。

 


動画は、島村楽器ミーナ町田店様で製作したKz FB DDD26 Korina Trans Black Jacaranda Finger BoardとKz RS Hybrid Junior Korina Trans Blackの紹介動画です。併せてご覧ください。

 


 

《SPEC》

[BODY]
■Body Structure / Solid(FB Type Construction, Set-Neck
■Body Material / Black Limba
■Body Binding / Tortoise
■Bridge / Kahler 7300 G
■Contour / Back

[NECK]
■Scale Length / 635mm
■Fingerboard R / 12”R(305mm)
■Neck Wood Material / Black Limba
■Headstock Top Material / Jacaranda
■Fingerboard / Jacaranda
■Neck Grip Shape / Medium Fat
■Fingerboard Binding / Tortoise
■Number of Frets / 22F
■Fret / FW55090
■Position Mark(Top) / Tortoise Block
■Position Mark(Side) / Gray
■Machine Heads / SD-91-P5R MG-T L6
■Nut / BLACK TUSQ

[COLOR]
■Top Color / See-Through Black Natural
■Finish / Open Pore

[CONTROLS]
■Controls / DDD26
■P.U. / DDD(KGW Mini-Humbucker)
■Notes / Volume×1, Tone×1

[PARTS etc]
■Hardware Color / Gold
■Pickguard / Acrylic Tortoise
■Knob / Gold
■Strap Pins / EP-B3 G
■Back Panel / Original

 


 

※本記事は2022年10月時点の情報です。