Kahler(ケーラー)トレモロを
大解説

Kahler(ケーラー)トレモロを大解説


エレキギターに搭載されたビブラート・ユニットは、シンクロナイズド・トレモロを筆頭に、フロイドローズ、ビグズビーと幾つもありますが、

KZいち推しのビブラート・ユニットは「Kahler(ケーラー)トレモロ」です。

Kz Oneの特徴の一つに挙げられるのではないでしょうか?

ところで、Kahlerって本来は「カーラー」と発音するってご存じでしたか?2017年のNAMMショウでKahlerの社長さんに「カーラーを使ってくれてありがとう」って挨拶されて焦りました。日本国内ではケーラーの方が通りが良いので、便宜上ケーラーで通してます。この記事内でもケーラーで進めます。


まずはケーラートレモロをフィーチャーした動画をご覧ください↓

ケーラートレモロは、フロイドローズが流行った80年代に新世代のビブラート・ユニットとして注目を集めたらしいのですが、90年代以降暫く市場から姿を消しました。2000年代に生産を再開し現在に至るわけですが、一時期市場から姿を消していたために認知度は今一つ。特に若いプレイヤーは知らない人が多いようです。ネット上には「音質が変わる」「チューニングが合わない」「サステインがない」など、知名度が低いマニアックパーツの宿命か誤った情報が散見されます。


そんなケーラーの濡れ衣を晴らすべく、ケイズギターワークスがケーラートレモロを大解説します!


まずは、いわゆる良くないとされるところを挙げてみましょう。

調整方法が分かり難い → 調整できるポイントが多いので、仕組みを理解していないと難しいですね。この記事で解消できるように頑張ります。

ケーラー独特の音になる → T.O.M、シンクロナイズド、フロイドローズ、ビグズビーそれぞれにそのブリッジの音があります。ケーラーを使えばケーラーの音になるのは自然な事だといえます。

音のアタック感やサステインが弱くなる → 固定式のブリッジと比べればその傾向はありますが、他のビブラート・ユニットと比べれば特に弱くはありません。そこを補って余りある利点があります。


事実、Kz One使用アーティストの本田毅さんや渡辺香津美さんを初めとするたくさんのプレイヤーが、「KZを弾いてケーラーのイメージが変わった!」「ケーラーってこんなに良いんだ!」と驚かれました。本田毅さんは、ケーラートレモロの操作感にインスパイアされたKz One使用を前提とした曲を書いてくださった程です!


それではケーラーの良いところを挙げてみます。

・スムースな使用感で音程の変化がなめらか

・チューニングの安定感が抜群

・アップもダウンも音程変化の幅が大きい

・各弦の弦高を細かく調整できる

・弦間ピッチの調整ができる

・オクターブ調整が簡単

・トレモロをロックすることができる(弦交換時にも便利)

・弦交換がとても簡単


まとめると、調整できるポイントが多い&ユニット自体の認知度が低いので調整方法が判らず敬遠されているというのが実情では無いでしょうか?

裏を返せば、調整方法さえマスターしてしまえばしなやかな動きでチューニングの安定感が抜群&音程変化の幅が大きく気持ちの良い使用感というケーラートレモロ独自の良さを発揮できると言うことです。


Kzが「ケーラートレモロ」を推す理由。それは、シンクロナイズド・トレモロ、フロイドローズ、ビグズビーその何れとも異なったユニークな点に惹かれたからです。


それでは具体的な調整方法を解説しましょう。

先ずはケーラートレモロの調整に必要な工具一式。


上から


六角ドライバー3種はギターに付属します。

トレモロアーム取り付け部

ネジタップが切ってあるので、時計回りに回して装着。


最後まで回しきってしまうと動きが止まってしまうので、2~3回転戻してセッティングするのがオススメです。

5/64インチの六角ドライバーを使って、アームのローテーション(トルク)を調整します。

右に回すとトルクがきつく、左に回すとユルユルに。

5/64インチの六角ドライバーを使用して、スプリングテンションアジャスターを調整します。

弦のゲージに合わせて、トレモロユニットの後部(カム)がトップパネルと水平になるように調整。

カムは前に傾いても後ろに傾いてもチューニングが安定しないのでNG。

ユニット裏側。2本のスプリングでテンションをコントロールしています。

0.05インチ六角ドライバーを使用して、弦間ピッチを調整します。

Kzでは弦間ピッチおよそ10.4ミリでセッティング。

0.05インチ六角ドライバーを使用して、弦高を調整します。

KZ出荷時の標準セッティングは、12フレット上で弦との距離が、1弦1.3ミリ、2弦1.4ミリ、3弦1.5ミリ、4弦1.6ミリ、5弦1.7ミリ、6弦1.8ミリ。

プラスドライバーを使用してサドルを前後に移動させ、オクターブ調整をします。

ネジを緩める際は弦を持ち上げてズラします。

1/16インチの六角レンチを使用して、このネジを締めることによりトレモロを固定できます。

トレモロを固定することで、弦交換がやり易い&作業が安定します。

トレモロ不要の場合は、このまま固定ブリッジとして使うことも可能。

ペグからナットへ弦の通りを真っ直ぐに、ヘッド角を緩やかにする事でチューニングが安定します。

ナットには潤滑製に優れたTASQ(現在はBLACK TUSQ)を採用。


そして、ケーラー搭載のKz OneにはGOTOHのロックペグを標準採用

ケーラー社はケーラートレモロにはロックナットを推奨しているのですが、ロックペグを採用しヘッドデザインを工夫したことで、ロックナットの必要がなくなりました。


ロックナットのギターは自然な弦の響き、特にヘッドの鳴りが損なわれるのでKzではロックナットを使用しないヘッドデザインを最優先に考えました。

ロックナットを使用しなかったことで、不要になったファインチューナーのツマミを取り外した状態が「Kz標準」です。

弦のボールエンド側をカット必要がないので、弦交換が簡単&スピーディーに行えるのもケーラーの良いところ。

ボールエンドを溝に引っかけるだけなのでとても簡単。

Kz One 2018年モデルから、標準仕様と比べて先端部が15ミリ低いKZ特製トレモロアームを標準装備。ボディートップからアーム先端までの高さが55ミリ〜60ミリくらいに収まる計算です。


アームを持ちながらのピッキングがやり易くなりました。

最後にKz Oneに付属のマニュアル画像。


なお、Kzではケーラー搭載モデルの出荷時にアームのトルク、カムの傾き、弦間ピッチ、弦高、オクターブをセッティング弦のゲージ(.010 – .046)に合わせてセッティング済み。ゲージを変えなければお客さまご自身で調整する必要はありません。


以上、Kahler(ケーラー)トレモロを大解説でした。


つたない文章で恐縮ですが、この記事が少しでもケーラートレモロの認知度向上につながったら嬉しいです。