Kz One 24フレット / ラウンド・トップ インタビュー
更新日:2021-03-16
Kz One 24フレット / ラウンド・トップ インタビュー
Kz Guitar Worksの中心モデルKz Oneに24フレット仕様、ラウンド・トップのモデルが追加されています。このスタイルのKz Oneは『祭 2020』でお披露目し、話題を呼びました。現在、楽器店からのオーダーの他、4月の『サウンドメッセ in Osaka』に向けてのショーモデルとして、バリエーション・モデルを準備しています。今回はWEBサイトのギタータウンの森廣さんに、弊社代表の伊集院にインタビューしてもらいました。
《Kz Oneが22フレットで登場した背景》
Kz Guitar Worksと言えば、ブライアン・メイのRed Specialの研究とそれを再現するレプリカの製作で知られています。その後、オリジナル・シェイプのKz Oneが2015年に発売された時に22フレット仕様で発売、現在に至ります。Red Specialが24フレット仕様なのに、なぜKz Oneが22フレット仕様だけでスタートしたのかを教えてください。
Kzギターの始まりは確かにRed Specialです。だけど、オリジナル・モデルのKz Oneを開発した頃(2015年)は、Red Specialと距離を置きたかった時期でした。その頃はホームページにもRed Specialを載せないなど、“封印”していました。それにRed Specialはブライアン・メイ自身が自分のために作ったギターのレプリカですから、クイーンの曲を弾くためには最高です。が、「誰にでも、どんな音楽にも使えるか?、使いやすいか?」というとそうではない。それにRed Specialは24フレット仕様ですが、クイーンの曲で24フレットまで使う曲は1曲か2曲ぐらいしかないんですよ。
あ、それは意外ですね。
だから、オリジナル・シェイプで設計する以上、「誰にでも弾きやすく、どんな音楽にでも合うギター」でなければ意味がない。そのためにKz Oneは一般性がある22フレットで設計しました。
フレットは多いに越したことがないと思いますが、22フレットは設計上、どんなところが有利ですか?
まず、ボディに3つのピックアップを並べた時の距離に余裕があるので、それぞれのピックアップの音の変化がつけやすい。それにフェイズ・アウトなどでは、ピックアップ同士の距離や高さで音が変わるので、設計上は22フレットの方が有利です。
《24フレットのKz One発売の経緯》
今回、24フレット・モデルを追加しようと思った理由は?
“Kz Oneを発売して、5年過ぎたから”というのがありますね。弊社はRed Specialの印象が強いので「Kz OneのKzギター」という評価を得るには時間が必要です。市場にKz Oneが浸透して、その上で24フレット仕様を、という流れを考えていました。ありがたいことに映画『ボヘミアン・ラプソティ』の影響で一時期大忙しになっていたのもあります。本当はもっと早く出したかったのですが。
お客様や楽器店からのリクエストもあったのではないですか?
最初の発売から5年も経つとRed SpecialとKz Oneの両方をお持ちのお客様もおられます。そういう方々に「24フレットのKz Oneを」と言われると断りにくい。それに開発は前々から進めていました。昨年、ようやく機が熟したと判断して、製作に移ったというわけです。
《イメージ的に違和感がないボディのアウトライン》
22フレット仕様と24フレット仕様を並べると、印象は違和感がありませんよね。でも、外周の形、ピックアップの配置場所、ブリッジの位置・・各パーツの場所などが少し違いますね。
どちらもKz Oneですから、同じように見えなければいけません。でも、そうするためには機能的デザインは全く違う別のギターになります。24フレット仕様ではプレイヤー目線で、座って弾いた時のポジションを重視しました。
え?そこですか?
たぶん24フレットまで使えるとかそういう答えを期待していたんじゃないですか?(笑)
はい(笑)
でも、それは当たり前すぎます。オーダーメイドのギターブランドが基本モデルを追加する。新たに設計するわけですから、単にフレット数を増やすだけではどうかと思います。だから、24フレット仕様では「弾きやすさ」を重視しました。
というのも22フレット(フラット・トップ)の時は右ひじが窮屈に感じる人も中にはいたようなんです。個人差といえばそうなのですが、あえて、それを開発時のテーマに据えたんです。
まず、24フレットに設計しなおすと、その時点で(22フレット仕様とは)ピッキングの位置が少し変わります。座ってギターを弾くと、ボディのくびれを右ひざに載せますよね? 24フレット仕様ではたった2センチだけど位置を変えています。これらによって、弾きやすく、ボディのバランスも取りやすくなっています。座った状態でギターを右ひざに載せ、両手を離した場合、24フレット仕様は、ほとんどの人がそのままギターが安定するはずです。
《ラウンド・トップの効果とピックアップについて》
なるほど。私も色々なギターを見てきましたが、フレット数を単に変えただけのモデルでは、見慣れた形が奇妙に変わるばかりで、良い印象になったギターを思いつきませんね。
Kz Oneでは、単に24フレット化したんじゃなくて、同じように見えるけど、用途を考えて作り直したわけですね? ラウンド・トップの方は?
ラウンドトップも同様です。別にフラット・トップが弾きにくいわけではありません。それにラウンドとフラットで、どちらが優れているか? でもありません。個人差を感じる要素なら、どちらでも選べるようにしたかったんです。こちらも「弾きやすさをお客様が選べること」がテーマだから追加した要素です。
ラウンド・トップは音とか軽量化の効果もありますか?
たしかに周辺が薄いので、軽くはなります。でも、軽量化を謳うほどの大きな効果はないです。むしろ、使う木材の重さ。木材の個体差の方が重さには影響します。
音については、セミホローだと違いを感じますね。フラット・トップよりもややふくよかなサウンドに聴こえます。内部の反響の仕方が違うのかもしれませんね。
あと、ピックアップの配置場所の違いはどうですか?
24フレット仕様はフレットが2個分増えるので、PU同士の間隔が狭くなるのは避けられません。特にブリッジを起点とするとフロントPUまでの距離は近くなります。実機を作る前は専用のピックアップの開発も考えていましたが、実際に作ってみるとその必要はありませんでした。どちらもKz Oneの音だと言える範囲に収まるよう設計しているからですが(笑)。
3シングルの場合、フロントPUの位置よりも課題となったのはフェイズアウトですね。これには2つのピックアップの距離と高さの関係が重要です。24フレット仕様でも出荷時に調整しているので、心地良いフェイズサウンドを出せます。
《何本かの24フレット/ラウンドトップを生産開始》
すでに何本もの24フレット/ラウンド・トップが完成していて、ミュージシャンや楽器店のスタッフも試していると思います。反応はどうですか?
いいですね。フレット数が増えて、22フレットとほぼ同じ音で弾けますから。すでに22フレットをお使いのギタリストからも好評です。楽器店の方もノリノリになってくれまして、色々なご相談をいただいています。例えば「右ひじ側だけラウンドで作れる?」とか。他にもこのギター(下写真)のようにKz Oneの形で、アッセンブリをRed Special風にとか。
▲Kz One Semi-Hollow Round Top 24F RS Control Kahler RS Color #20200260
このギターはかっこいいですよね?色とかコントロールをピックガードに載せたり。Red Specialはヘッド浮き(ボディエンドが重く、ヘッド側が上がりやすい)しやすいので。このKz Oneは弾きやすくて、それ(ブライアン・メイ)っぽい。
ギタリスト清水一雄さんに試していただきました。
▲Kz One Semi-Hollow Round Top 24F 3S11 T.O.M Black #20200221
この黒いのも精悍ですよね。
艶消しの黒ですね。これはKGWダブルコイルをフロントとリアに、センターはシングルに、という“DSD仕様”で、ちょっとハードロックに寄せたギターです。いつもお世話になっているギタリストの清水一雄さんは「ゲイリー・ムーアの音がする」と言って弾いてくださいました。清水さんはご自身のYouTubeに試奏動画をアップしていただいているので、それをご覧ください。
あと、このサンバーストはラウンド・トップが映えますね。
▲Kz One Semi-Hollow Round Top 24F 3S23 Kahler Sunburst #20200257
こちらはボディをサンバースト、グロス仕上げにしたモデルですね? ラウンド・トップの曲面はグロス塗装でも映えますね。
ラウンド・トップはバインディングも映えるんですよ。だから、単色のホワイト・バインディングだけでなく、多層のバインディングを入れたくなります。
ラウンド・トップは“構えた時の柔らかさ”、“見た目の立体感”、あとは“他人とは違う”という(笑)
他人と違うのってすごく大事ですよね。せっかくオーダーするんだから自分が一番満足するのが大事。そこがオーダーブランドの楽しみですから! 今日拝見したのは「24フレット+ラウンド・トップ」の組み合わせですが、「24フレット+フラット・トップ」とか「22フレット+ラウンドトップ」とかの組み合わせは?
弊社のカスタムラインではオーダーで対応できます。今は『サウンドメッセ in Osaka』に向けてのショーモデルが多いので「24フレット+ラウンド・トップ」を中心に推しています。サウンドメッセに限らず、楽器店で24フレットを見かけたら、ぜひ弾いてみて下さい。かっこよくて、弾きやすいギターです。
聞き手 : 森廣真紀(ギタータウン)
※本記事は2021年3月時点での情報です。